先日、NHK Eテレにて、
ギャンブル依存症を特集する番組が放送されました。
NHK Eテレ ハートネットTV シリーズ 依存症 第1回 ギャンブル依存症 —孤立する当事者と家族—
こちらを観てみたので、
ギャンブル依存症者本人である僕の視点で感想を書いてみます。
再放送もされる予定なので、何かの参考になれば幸いです。
第1回 ギャンブル依存症 —孤立する当事者と家族—
3回に渡って特集された依存症シリーズのうちの、
第1回目がギャンブル依存症だったので、
こちらの内容と感想を書いてみます。
第2回、第3回についても依存症特集なので視聴しましたが、
ギャンブルに限った話ではないので、
詳細については、この記事の中では省かせていただきました。
内容
前半:家を失ったギャンブル依存症家族の話
前半はギャンブル依存症の弟と、それを支援する兄とのドキュメンタリー。
弟は長崎の回復施設に入っており、
実家で一緒に暮らしていると、弟の依存症回復のためによくない、
ということで、家を取り壊したという事情のある家族です。
パチンコを苦しみながらやってしまう弟。
家族の金でパチンコに行き、暴力もエスカレートして、
家族が途方に暮れ警察に行ったところ、
精神科病院への通院を推奨されるが、
結局紹介されず、たらい回しにされた経緯が語られます。
依存症の病識がないまま10年以上が経ち、
ようやく回復施設に入ることができたところで、
前半のドキュメンタリーが終わります。
その後、ギャンブル依存症治療専門の医師がコメントとして、
依存症が否認の病であること、
家族は自分たちで解決しようとしてしまうことから、
なかなか問題が公にならず、
このように、長年抱え込んでしまう家族も決して珍しくないとのこと。
後半:支援団体の活動ドキュメンタリー
番組後半では、ギャンブル依存症支援団体の活動と密着の様子が放送されました。
一応、番組上の具体名は伏せてありましたが、
代表の田中紀子氏が出ているので、以下の団体のことです。
問い合わせされる問題の多くは、前半でもあった通り、
家族が抱え込んでしまったことによって悪化してしまった問題が多いとのこと。
フォーカスされた相談者は母親で、
28歳の息子が違法な野球賭博にハマり、
その借金の尻拭いをしてきたそうです。
その後、代表の田中氏が、その息子を回復施設に入れようと説得しますが、
しかし、すぐにはうまくいかず、回復施設に行くことを拒否した結果、
闇金に手を出して、親が借金して30万の尻拭いをしたそうです。
そこからは、当事者の両祖父母を交えた家族との話し合いで
修羅場な様子が映し出されて、
なんとか最終的には施設に行くことで、一応の決着をみます。
その後、代表の田中氏を交えてスタジオでの説明。
どのように田中氏が活動しているのか、ということを説明して行きます。
心のどこかでは、やめなければならない、
やめたいと思っている当事者をサポートするために、
力ずくでも介入するという活動を行なっているそうです。
海外では仕事上で、こういう家族関係への介入をするケースが認められているので、
それを日本でも推進していきたい旨が話し合われていました。
またカジノ導入についての田中氏の見解としては、
すでに依存症になっている人たちの支援ができてない状態で、
新たなギャンブルを作ることに対しての言及で番組が締めくくられました。
感想
注意事項:ちょっとした映像で起きる衝動
ちょっとしたパチンコ・パチスロの映像や音声が流れるだけで、
半年やめてる今でも体が反応してしまうことに、
依存症という病気の根深さを感じます。
当事者が視聴する場合は注意して欲しいかなと思いました。
ギャンブル依存症は回復可能という考えに対する疑問
あとは、自分はネット上の支援団体であるSAGSの、
「回復」ではなく「克服」という考えにある程度賛同しているので、
ギャンブル依存症が回復可能な病気であるという点には少し疑問があります。
まあ、言葉のアヤというか、言い方の問題だけと言われればそれまでですが、
病気ではあっても、治るものではないという考えは重要です。
不治の病ではあっても、上手に付き合っていくことはできる。
直接的に効く薬が無いような病だからこそ、
病識のあり方も工夫が必要なのかなというのが僕の見解です。
回復施設が合う・合わないの問題
後半でフォーカスされたのは、パチンコパチスロではなくて、
野球賭博に依存した若者。
野球部の先輩に誘われて始めたそうなのですが、
その彼に田中氏が進めた回復施設、
これは野球のようなチームプレーをやってきた人間には合うとのことです。
確かに回復施設は、入寮制で共同生活をしながら、
回復をしていくというプログラムがほとんどのはずなので、
共同生活ができないと辛いような気がします。
僕は、自助グループのギャンブラーズアノニマス(GA)ですら、
3ヶ月でギブアップしてしまいましたので、
どうしても、仲間意識が強すぎるとキツイなあと思ってしまうんですよね。
これは、親から聞いた話ですが、
両親がギャンブルの回復施設に相談に行ったときに、
僕のようなタイプ、
要するに自己愛性パーソナリティ障害気味な人にとっては、
回復施設や自助グループといった、
集団でのプログラムは合わないということを、
回復施設の人から聞いていたそうです。
まあ確かに、その通りかもしれませんね。
結局いまは、ネット上の自助団体であるSAGSの参加と、
このブログでのカウントで約半年、ギャンブルをやめ続けているので、
それくらいの距離感が僕には丁度いいのかもしれません。
重度なギャンブル依存症の人にフォーカスした演出感
もちろん、問題視されるのは重度なギャンブル依存症者への支援であるでしょうし、
いますぐに助けが必要な状態の人、家族への直接的なサポート、
それはきっと必要なことだと思いますし、
実際にそういう方はいらっしゃるのでしょう。
ただ、一応ギャンブル依存症を認識している僕でも、
なぜか、テレビを通して見ると、
身近なことではなく、特殊な人の経験のように思ってしまう気がするのですよね。
テレビでは、依存症当事者との話し合いで、
かなり修羅場な様子、当事者の抵抗の様子が映されていましたが、
どうも演出のような印象を受けてしまいます。
過激な演出をしておけば、テレビ的に面白いというか。
演出じゃないにしろ、もっとも見応えのあるシーンを選択していることは間違い無いので、
どうしてもテレビ的、メディア的な過剰さを感じてしまいます。
ただ、それは僕自身がそういうところまで経験をしていないからなのか、
確かに親には借金を立て替えてもらったりと、
依存の問題を大きくしてきた経緯はありつつも、
そこまで重度ではない? 第三者の介入を必要としなくても、
なんとか症状を抑えることに成功しつつあるから、
わからないだけかもしれませんが。
ただ、テレビ的に美味しい演出ばかりにフォーカスしてしまうと、
「うちはまだそこまでじゃない」
「自分はそこまで酷くない」
と考えてしまって、
結果酷くなってしまうこともあり得るのが怖いなと思いました。
自分、あるいは家族が依存症かもしれないと疑った時点で、
何かしらの支援団体やネットなどで、
もっとリアルな見解を収集することが必要なのだと思います。
結論:正直なところ、他人のことは考えられない
まあタイトルの通りなのですが、
やめ始めて半年くらいでは、まだ自分のことで精一杯というのが、
正直な僕の気持ちです。
依存症の問題、他にも苦しんでる人に手を差し伸べる、
ということはまだまだ僕にはできないですし、
将来的にそう思えるかどうかもわからないです。
このブログも、理想としては、
いま現在ギャンブル依存症で苦しんでいる人のため、
コンテンツを用意できれば理想ですが、
日々のカウント日記をつけることで精一杯です。
ただ、そんな僕でも言えることがあるとすれば、
誰かが困っている時点で、それは依存症という病気だということです。
重度、軽度を人と比べてしまっては、ご自身の克服(回復)が遅くなってしまいます。
ギャンブル依存症当事者であっても、
その家族であっても、まずは自分自身の問題をはっきり問題だと認識すること、
それが全てのスタートなのではないかなと思います。
再放送予定・公式サイト
再放送日時
2017年11月7日(火曜) 午後1時5分 〜 午後1時34分
公式サイト
http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/program/index.html?id=201710312000
また、第2回はクレプトマニア(窃盗癖)についての特集
第3回は依存症全般に関する討論となっておりました。
詳細な紹介はしませんが、
11月8日(水)、11月9日(木)の同じ時間に再放送されるので、
まだご覧になられてない方、興味のある方はいかがでしょうか。